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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1198

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1198               

スティーヴン・キング 「ミスター・メルセデス」            

ホラーの巨匠キングは、ときおりミステリーっぽい作品を

著す。だが、ホラー要素をのぞいた純粋ミステリーと

いうことで言えば、本作品が最初と言っていいように

思う。

母親と2人で暮らす20代の男ブレイディ。電器屋で

PC修理の出張業務のほか、アイスクリーム移動

販売の仕事をしている。ブレイディは不幸な生い立ちも

あり頭がいかれているサイコパスだ。

ブレイディは、職を求めてハローワークの会場に並ぶ

人たちめがけてメルセデスで突っ込み、8人の犠牲者を

出す。

退職し一人で暮らす元刑事ビル・ホッジスは暇を持て

あましている。ホッジスを監視しているブレイディは、

メルセデス事件の犯行を名乗り、ホッジスを挑発する。

そしてブレイディとホッジスはネットでの会話をはじめる。

メルセデスは盗難車で、車の所有者はノイローゼに

なり自殺をしている。ホッジスは所有者の妹に接触し

事情を調べる。そして、この妹ジャネルと恋仲になる。

かつての同僚に連絡し協力を依頼する方法もあるの

だが、ホッジスは自らの手で事件解決をはかる。彼に

協力するのは、黒人高校生のジェロームと、メルセデス

所有者の従妹のホリー。二人ともコンピュータに精通

しており、その技術を駆使して犯人ブレイディに迫る。

そして、ブレイディは第2の犯行を計画する。それは

最初のメルセデス事件よりはるかに大掛かりなもの

だ・・・。

最初から犯人は明らかにされており、元刑事が仲間と

協力して、少しずつ手がかりを得ながら犯人に迫る

という、オーソドックスな造りだ。少しJ.ディーヴァーの

ライム・シリーズと似ているかもしれない。

ホッジス、ジャネル、ホリー、ブレイディの半生と

いまの生活を明らかにしていくことで、それぞれの

キャラが引き立ってくる。そして現代のアメリカ社会の

断面も垣間見える。

とは言え、本作品は社会派ミステリーではない。

主役と脇役(ほんの少ししか登場しない人も含め)の

行動がバランスよく散りばめられており、手練れの

書きっぷりだ。

なお全体が3部作になっているらしい。本作品は

第1部ということで、今後の続編に期待したい。