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東山魁夷

東山魁夷 「人影のない草原に腰をおろして、刻々に変わってゆく光の影と綾を、寒さも忘れて眺めていると、私の胸の中にはいろいろな思いがわき上がってきた。喜びと悲しみを経た果てに見出した心の安らぎとでもいうべきか、この眺めは対象としての現実の風景というより、私の心の姿をそのまま映し出しているように見えた。私は涙が落ちそうになるほど感動した。なぜ、あんなにも空が遠く澄んで、連なる山並みが落ち着いた威厳に充ち、平野の緑は生き生きと輝き、森の樹々が充実した、たたずまいを示したのだろう。今まで旅から旅をしてきたのに、こんなにも美しい風景を見たであろうか。」。ここは、肥後平野と阿蘇山を眺望する場所です。東山魁夷は1945年春に召集され熊本へ行きます。戦車への体当たり攻撃の演習の日々の中で、この風景を見て涙が落ちそうになるほど感動しました。母と弟の相次ぐ逝去やさまざまな苦労の中で、風景画家として立つ決心をしました。題名は、「残照」(1947年)東京国立近代美術館蔵です。第三回日展で特選となり、政府買い上げとなりました。