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エッセイ「羊頭狗肉」

会社からの帰り道、お菓子でも買おうかと思い、家の近くのコンビニに立ち寄った。

店の中には、いつも見かける大柄な男性店員が一人。

それと、客が僕以外に一人か二人、といったところだった。

まずはお金を下ろすためにATMコーナーへ向かうと、そのタイミングで一人、

フードを深めにかぶった、見るからに怪しげな雰囲気の人が入店してきた。

(最初は男だと思ったが、よく考えると、背丈は僕より低かったかもしれない。

つまり女である可能性もあるのだが、いずれにせよ、一目では分かりにくかった。)

素人の僕にすら怪しまれるレベルなので、悪人であれば大した奴ではないのだろうが、

それでも一応、普段以上に背後に気を配って、無事にお金を下ろした。

それから僕はお菓子コーナーへ行き、何を買おうか悩み始めた。

昨今、ジャガイモの不作によって、ポテトチップス製品の販売休止が発表された。

そのニュースが僕の印象に影響しただけである可能性も否定はできないが、

確かに、ポテトチップスがある陳列棚には、普段より商品が少ない気がした。

それでも、まだポテトチップスの袋は残っていた。僕はそのうち一つを手に取り、

もう一つぐらい何か買おうかと、ガム類が置かれているコーナーに移動した。

その時だった。

先ほど見かけたフードの客が、ポテトチップス製品1種類を丸ごとすべて、

どこから持ってきたのか、牛乳パックを入れるような大きな箱型のケースに、

ドサッという音と共に落として入れている姿を目の当たりにした。

流石に気になったので、ほんの少し、5秒くらいだけ様子を見ていると、

その手には、お菓子の写真が数十種類印刷されている紙を持っている事が分かった。

僕は「なるほど、噂の『アレ』なのかな…」と思った。

その客は、その後もまだ何種類かケースに入れるつもりがありそうだった。

もう少し様子を眺めたいという好奇心もあったが、こらえた方が良いのは明らかだ。

そういう訳で、僕は結局ポテトチップス一袋だけ購入し、速やかに店を後にした。

家に帰ってから、僕はあるニュースを思い出していた。

販売休止が発表されたポテトチップスの、相次ぐネット出品に関するニュースだ。

(記事のURLは、本日記の末尾に記載している。)

果たして、僕が見かけた客は、その後購入品をネット出品する予定なのか。

もちろん断定はできない。単に買いだめ目的だったという場合もあるだろう。

ただ少なくとも僕は、その客の怪しげな様子から、そうである可能性は考慮した。

そこで、「その人は購入したポテトチップスをネット出品する」と仮定したうえで、

「それを見た僕は、誰かが出品したポテトチップスを買うか」と考えてみた。

実は、答えはどのみち最初からNOなのであるが、今日の一連の流れを見たことで、

ネット出品されたものを買うことを否定的に捉える気持ちがますます強まった。

そもそもその客は、高い位置にある陳列棚から、ドサッと商品を落としていた。

あれでは、中身が傷んだり、砕けたりしてしまってもおかしくない。

言い換えれば、「これから売る予定の品物を雑に扱っていた」ということだ。

一般的にモノを売る人には、売り物を大切にする姿勢が最低限必要である。

あれが売り物を仕入れる行為だとしたら、まず売り手としての姿勢がなっていない。

ましてや、扱っているものは、お菓子とはいえ「食料品」。

衛生面で問題があれば、状況次第では販売者が責任を問われる品物なのである。

果たして、食料品をネット出品している人たちに、食料品を扱うことのリスクや、

何か起きた時の責任の取り方などを、真剣に考えている人たちはいかほどいるのか。

少なくとも僕は、例えば今日見た光景などを理由として、ネット出品の世界では

「販売者の責任感やモラルは保証されていないものである」とイメージしている。

ついでに、ニュースで明らかになっていることとして、ネット出品されたものは、

何らかの理由で定価よりも高い場合がほとんどである。

定価よりも高く、雑に扱われている可能性があり、販売者の質も保証されていない。

そのような品物を、果たして安心して買えるのだろうか。僕にはそこがただ疑問だ。

疑い過ぎなのかもしれないが、やっぱり買い物は信頼できる所でやりたい。

特に食べ物を買う時については、強くそう思う。

そんな自分の価値観を、改めて考えた次第である。

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